研究課題/領域番号 |
18360396
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大竹 久夫 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10127483)
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研究分担者 |
大政 健史 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00252586)
本田 孝祐 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90403162)
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キーワード | 化学感覚 / アルゴリズム / 定型的行動 / 脳 |
研究概要 |
哺乳類動物では、海馬ニューロンにおいて短期間に繰返し活動電位が発生すると、シナプスの伝達効率が向上する長期増強と呼ばれる現象が知られている。魚類であるメダカの脳には、海馬と呼ばれる領域は存在しない。本年度の研究により、メダカにアミノ酸のアルギニンをエサと同時に繰返し与えることで、アルギニンとエサとの関連学習が可能であるということがわかり、メダカに嗅覚に関連した記憶能力があることが推察された。このことは、脳に海馬が存在しなくても嗅覚に関連した記憶を形成することができることを示唆していた。そこで、嗅覚情報処理における一次中枢である嗅球が記憶に関与しているかどうかを調べるため、嗅球神経細胞の時空間応答に関する光学計測法を用いて解析を行った。実験の結果、メダカが嗅上皮においてアルギニンを感知した時、嗅球の上半部分において神経細胞の集団的活動応答が現れることがまず明らかになった。また、左右の嗅球においてほぼ対称に活動電位を発生した神経細胞集団が現れ、その集団的応答の一部はやがて終脳へ向かうものの、残りは嗅球の下半分部分へと移動することがわかった。このことから、メダカは少なくとも嗅覚においてアルギニンを識別していることが示唆されたが、この嗅球レベルでの識別が直接記憶と関係しているかどうかについては、残念ながら明らかにするに至らなかった。メダカの脳には約50万程度の神経細胞が存在しているが、マウスなどの哺乳動物と比較すると約10万倍も小さい。メダカがうまく外部環境に適応するためには、神経細胞をより効率的に使用しなければならないはずである。メダカの嗅球が匂い記憶に直接関与しているかどうかは、これから解明が待たれる興味深いテーマであると思われる。
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