本研究課題では、完全置換型人工肝臓の開発を目標とし、毛細血管網を有した新規肝細胞組織体構築による肝機能発現とその維持を達成できる培養系の創出に取り組んでいる。本年度の研究実績は以下の通りである。 【機能性分子固定化基材の開発】 平成19年度に開発したヘパリン/肝細胞増殖因子(HGF)固定化コラーゲン培養基材の最適化を行った。初代ラット肝細胞の形態はヘパリンの固定化密度に大きく影響され、スフェロイド形成ならびに肝機能発現に対してヘパリンの最適固定化密度が存在した。さらに、様々な密度のHGF固定化基材を用いた肝細胞培養の結果、HGFによる効果よりもヘパリン固定化密度に呼応したスフェロイド形成促進の有無の影響が大きいことが明らかとなった。 【肝細胞包埋ヒドロゲル充填多孔質担体培養技術の確立】 本研究で開発した、月刊蔵由来酵素を用いた肝細胞包埋ゼラチンゲル充填多孔質担体培養技術について各種評価を行った。肝細胞はコラーゲンゲル培養と同等の肝機能を発現・維持を示し、本培養技術が優れた肝細胞培養技術になることを実証した。さらに、ヘパリン/HGF含有ゲルとすることで肝機能発現はさらに向上した。 【肝細胞包埋ヒドロゲル充填多孔質担体のラットへの皮下移植】 ヘパリン/HGF含有条件にて肝細胞凝集体包埋ゼラチンゲル充填ポリウレタン発泡体をラットに皮下移植した。移植10日目でも担体形状は良好に保持されつつ、充填していたゼラチンゲルのほとんどは生分解されていた。さらに、担体内における肝細胞の生着と毛細血管網の新生が確認された。しかしながら、生体内における新たな肝組織構築技術として確立するためにはさらなる最適化が必要であった。
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