研究概要 |
近代化学工業の進歩に伴い膨大な量の化学物質が合成され、多方面に利用されているが、これらの中には、生物毒性や内分泌攪乱作用を有するものも含まれており、環境中への拡散による生態系への影響が懸念されている。Arthrobacter sp. KI72株が保持するプラスミドpOAD2上には、高機能型ナイロンオリゴマー分解酵素 (NylB)、およびNylB類似カルボン酸エステル分解酵素 (NylB*)がコードされており、非天然物質に対する微生物の適応・進化を分子レベルで解析する上で恰好の系である。本研究では、下記の課題について検討する。 (1) ナイロンオリゴマー分解酵素の構造NylB/NylB' の酵素分子単独、酵素・基質複合体の立体構造を解析する。さらに、触媒機能に重要と推定されるアミノ酸(Lys115, Tyr170, Asp181, Tyr215, Asn266, Tyr370)を他アミノ酸へ変えた変異酵素を取得し、機能変化との相関から、触媒機能に関わるアミノ酸残基を特定する。 さらに、NylA,NylCについても、その構造を解析する。これらの結果を基に、非天然アミド化合物変換反応を触媒する酵素の設計原理創出を試みる。 (2) 逆反応による非天然アミド合成 ナイロンオリゴマー分解酵素(NylB/NylB' )は、微水系で効率的にアミド合成反応を触媒する。その分子基盤を明らかにし、非天然アミド結合を有する有用物質の生産(逆反応を利用した非天然アミド合成)に応用する。
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