研究概要 |
計画に従って,下記の3項目の研究を実施した.また,来年度以降の研究のために噴霧粒径計測装置を購入し使用法をマスターした。 (1)噴霧燃焼数値シミュレータ開発のための準備 KIVAコードを米国エネルギー省より購入し,同ソフトの全体構造を把握し,本研究で開発する噴霧燃焼数値シミュレータに流用できる箇所を同定した.KIVAコードを用いて同軸噴霧流における火炎伝播問題を計算した.予混合燃焼しか記述できない現行のシミュレータでは,保炎に至る非定常な火炎伝播状態を適切に記述できないことを確認した. (2)液滴間火炎伝播の計算方法の開発 問題は,一つの液滴で代表される多数の液滴の間の火炎伝播をどのように記述するかである.微小重力実験で検証された液滴間火炎伝播モードマップに基づいて,火炎伝播に伴う気液相の状態変化を適切なジャンプコンディションとして表現する方法を考案し,局所状態の切り替えによって火炎伝播の効果を発現させる計算アルゴリズムに仕上げた.この成果を受けて企業との共同研究を検討した. (3)乱流微粒化特性の定式化 気体ウェーバー数がO(1)になる条件で液糸の分断を引き起こす不安定波の特性を明らかにすることが,乱流微粒化機構を考える上で非常に重要である.数値シミュレーションに基づく物理的な考察により,微小重力実験で明らかになった気体ウェーバー数がO(1)の液糸の分断特性を理論的に基礎つけることに成功した.従来の微粒化理論は,全てレーリーの理論に立脚しているが,この理論は乱流微粒化での液糸の分断を基礎付けることはできない.これまでの通念とは異なり,液糸の分断モードはウェーバー数が同じでも多価であり,他の条件によって最も速く液糸が分断するモードが実現し,微小重力実験で発見された新しい分断モードは,それであることが判明した.
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