研究課題
平成20年度は、イオンスラスターから噴射されるイオンビームとそれを電荷中和させるために放出される熱電子との相互作用に着目したプラズマ粒子シミュレーションを行った。シミュレーション空間の一方にスラスターを仮定し、そこからイオンビームと中和電子をシミュレーションモデル空間に注入し、それぞれの時間空間発展を解析した。プラズマパラメータは、現実モデルを参考にし、イオンビーム速度に対して電子熱速度が十分に大きい場合について着目した。得られた知見のひとつとして、数キロボルトで加速される冷たいイオンビームの先頭付近で電位の壁が生じ、それによって中和用電子が跳ね返され、結果としてイオンビーム領域全域において電子の熱化が顕著であることが分かった。また、イオンビーム先頭付近では、静電的な擾乱も確認された。従来のスラスター噴射イオンビーム解析においては、放出された中和電子の温度が空間的にも時間的にも一定という仮定をおいたが、今回のプラズマ粒子シミュレーションによって電子温度が初期の温度より高くなる可能性があることを明らかにした。中和電子環境はイオンビームの挙動に影響を与えるものであり、イオンエンジン加速グリッド損耗解析のみならず衛星近傍でのプラズマ環境に大きな影響を与える。今回、シミュレーション領域の制限により小規模の解析しか出来なかったが、今後、シミュレーションの高速化をはかるとともに、大規模領域におけるイオンビームと中和電子の相互作用についての詳細解析を行い、イオンエンジン搭載の衛星環境や噴射イオンビームによるプラズマ干渉などについて理解を深めたい。
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