アフターバーナーによる二段燃焼型小型ガスタービンを用いて、CMC試験片の温度を450℃と650℃の間で急加熱・急冷却するという熱衝撃試験を行った。熱衝撃単独によるき裂などの損傷は試験片表面には観察されなかった。熱衝撃を与えていない試験片(処女材)と熱衝撃後の試験片(熱衝撃材)に対して、3種類のサイズの飛翔体を使用して飛翔体衝突(FOD)試験を行い、熱衝撃と衝撃損傷の関連を調べた。処女材、熱衝撃材ともに衝突表面にはほぼ同程度の臨界衝突エネルギー以上で繊維束の崩落と破断による正方形状のクレーターがみられた。表面損傷面積は飛翔体サイズによらない衝突エネルギーの関数として表させたが、熱衝撃材のほうが同一衝突エネルギーに対する損傷面積は大きかった。また両試験片ともにほぼ同じ臨界衝突エネルギー以上で衝突裏面にスポール破壊が見られた。ただし、処女材ではピラミッド形状のスポール片が生成されたのに対し、熱衝撃材ではばらばらに粉砕されたスポール片が生成された。次に、FOD試験後の試験片について、内部の損傷状態をX線CT装置などで詳細に分析・観察し、各衝突エネルギーでの損傷の内部構造を明らかにした。これまでの研究により、CMCの飛翔体衝突による損傷発生と進展のクライテリオンがおよそ判明し、耐熱構造部材として使用する際の耐久性データを与えることができた。一方、汎用の動的有限要素解析ソフトを用いて、飛翔体衝突損傷の進展シミュレーション法の検討を行った。今年度は構造が比較的単純であるが異方性やはく離を考慮しなければならないFRP積層板について、結合力要素を用いた損傷進展解析を行った。解析で得られた損傷進展挙動は実験結果と類似しており、解析法の妥当性が検証されたが、破壊のクライテリオンについてさらなる検討が必要である。さらに、粒子法については基本的なコードを作成した。
|