研究概要 |
本年度は,ムラサキウニ摂餌実験,魚類行動パターン実験を行い,得られた結果を基に作成したモデルを用いて数値実験を行った.また,遊休漁港内における深層水放流実験ならびにそれを模擬した水理模型実験を行った.以下にその結果を示す. ・ムラサキウニ摂餌実験の結果,クロメ,マクサ共に水温が高くなるほど摂餌率が高くなり,水温に対する増加傾向は夏場に傾きが小さく,冬場に傾きが大きくなることがわかった. ・藻食魚類行動実験の結果,対象魚は水温の低下に対し,低温の水塊を避けるように移動すること,水槽内の水温が全体的に低下すると水槽の底で動かなくなることがわかった ・藻食動物の摂餌行動を表現したモデル計算によって,水温低下によってその海域の海藻摂餌圧は抑制できること,藻場全体の摂餌圧を減少させるためには大規模な水温変化が必要であるが,滞留をさせて重点的に低温水塊を作ると抑制効果が大きくなる可能性があることがわかった. ・遊休漁港内への深層水放流実験を行った結果,トリカルパイプと呼ばれるネット状の筒を用いた放流では深層水が高密度でゆっくりと進行するため,直接放流するよりも深層水の滞留効果が高いことがわかった. ・深層水放流の水理模型実験を行った結果,トリカルパイプを用いた放流実験結果は現地実験での結果と定量的にもほぼ一致し,今後海底地形の影響や藻礁の影響などを調べる際に,水理模型実験が有効な手段となることがわかった.
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