研究概要 |
本年度は,放流した海洋深層水を効果的に滞留させるための構造物の効果を把握することを目的として,遊休漁港内における深層水放流実験を行った.実験は2009年6月と2009年9月に実施し,それぞれ通常の放流に加えて,2m×1m×0.2mの木製の構造物,ならびに0.8m×0.9m×0.4mのブロックを組み合わせて作成した構造物を設置し,海洋深層水放流後の放流水の挙動を計測した.その結果,6月に行った高さ0.2mの構造物を設置した実験では,明確な滞留効果を捉えることはできず,逆に構造物を放流水が乗り越える際に拡散を大きくしてしまう現象が見られた.一方9月に行った高さ0.4mの構造物を設置した実験では,構造物を乗り越えた放流水は拡散するものの,構造物内にはある程度海洋深層水が滞留する現象が確認できた. また,本年が最終年度であることから,平成18年度から行ってきた,高知県海洋深層水研究所地先海域での海藻ならびに藻食動物現存量調査結果,海藻光合成パラメタ取得実験結果,大型水槽による海藻培養実験結果,ムラサキウニ摂餌実験結果,藻食魚類の行動パターン実験結果,遊休漁港内における深層水放流実験結果等を全て整理しデータベース化するとともに,藻場生態系モデルの各種生物パラメタを更新した上で,数値シミュレーションを行った結果,水温低下によってその海域の海藻摂餌圧が抑制できること,藻場全体の摂餌圧を減少させるためには大規模な水温変化が必要であるものの,効果的な滞留構造物を設置することにより重点的に低温水塊を作れば摂餌抑制効果が大きくなること,などが明らかとなった.
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