本年度は平成19年度に行った最適数学モデルの構築に必要な流体力の計測結果の整理を行い、不足分の追加実験を行うと共に最適数学モデルの検証を行った。 まず、対象としている2隻の船舶の内、2軸2舵船は追波中においてブローチングを起こし、最大70度横傾斜した状態で航走後、復原することがわかったので、70度まで横傾斜させた状態で波浪中を曳航し、最適数学モデルに必要な流体力について計測を実施した。 次に、拘束模型実験によって得られた流体力を組み込んだ最適数学モデルの構築を昨年度行った。この運動方程式に、計測した流体力を組み込み、運動推定を行った。その結果は下記の通り。 (1)漁船船型:従来の数学モデルによる推定では20度以上の斜め追波状態において転覆領域が非常に大きかったが、今回の最適数学モデルにおいてはこれらの転覆領域が縮小し、逆に、真生井波に近いところではブロー賃具領域が拡大するなど、模型実験結果と良い一致が得られるようになった。 (2)2軸2舵船型:最適数学モデルによる推定では転覆領域がFn=0.35以上でなおかつ、-25度以上、斜め後ろから波を受けている状態にある。自由航走模型実験結果からは、Fn=0.4以上で-22.5度以上の斜め追波状態で大傾斜をすることがわかっており、非常によい一致を示している。 以上のことから、大傾斜大波高中の強非線形流体力を用いた最適数学モデルによる推定は模型船型によらず、実験結果を非常によく説明できることがわかった。
|