研究概要 |
水圧破砕法は,km級の大深度における地殻応力の現位置計測を可能とする唯一の実用的手段として従来から広く用いられてきた.しかし,この方法では,坑井直交面内における最大応力を評価する要領に致命的な欠陥のあることが最近明らかになっている.その原因は,従来の仮定に反し,(a)残留き裂開口幅の存在によって,き裂の開口以前から坑井水圧がき裂内に浸入してしまうこと,(b)加圧システムのコンプライアンスC(システム内の水圧を単位量だけ増加させるのに必要な水の体積,換言すると剛性の逆数)が大きすぎるために,き裂開口の影響が坑井水圧の変化挙動に現れにくいことにある.これらを考慮して大深度での計測を可能にすべく我々は,坑井底部に直径の小さい試験孔(以下,ベビー孔)を新たに掘削して,その中で水圧破砕を実施するという新方式(Baby Borehole Hydro-fracturing, BABHY(ベイビーと呼ぶ))を提案した.その実用化を図るために本年度には,岐阜県松代町で地表から鉛直に掘削したPQサイズ(φ123mm)で深度約80mの坑井を利用して試験を実施した.これにより,(a)パイロット孔掘削装置の要領で,先端にAQサイズ(φ47mm)のコアビットを取り付けた部品(以下,投げ込み型ビット)をPQの掘管内部を通して坑底まで自由落下させて掘管内壁に固定,(b)同ビットを使ってベビー孔を掘削,そして,(c)投げ込み型ビットをつり上げて回収した後,今度はストラドルパッカーを同じく掘管内部を通して坑底までワイヤーラインで降ろし,掘管内壁に固定,ベビー孔内で水圧破砕を実施するという過程を実証することができた.また,同フィールド試験で用いたパッカー装置と大型試験片(700×700×1000mm^3)による室内水圧破砕実験を実施して,圧力データと模擬地殻応力の関係が,我々の提案する理論(1/2理論と命名)通りであることを検証した.
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