研究課題/領域番号 |
18360433
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長坂 徹也 東北大学, 大学院環境科学研究科, 教授 (30180467)
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研究分担者 |
伊藤 聰 東北大学, 大学院環境科学研究科, 助教授 (70133048)
横山 一代 東北大学, 大学院環境科学研究科, 助手 (50374997)
中島 謙一 東北大学, 大学院環境科学研究科, 助手 (90400457)
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キーワード | リン資源 / 製鋼スラグ / 磁気分離 / リン酸カルシウム / 相平衡 / リサイクル / 超電導磁場 / マグネタイト |
研究概要 |
燐は鋼の低温脆性を著しく助長する典型的有害不純物元素である。このことから、製鋼工程では、原料である鉄鉱石や石炭から鋼中にわずかに混入する燐をスラグ処理によって除去している。年間粗鋼生産量約1億1千万トン超を誇る我が国では、不可避的に年間1千万トン以上発生する製鋼スラグ量の削減、あるいはスラグの高度リサイクル法の開発は急務である。 本研究の目的は、製鋼スラグから磁場によって燐酸カルシウムを分離・回収し、廃棄物から新たな燐資源を得ると同時に、残分を製鋼工程にリサイクルし、製鋼スラグの発生量を大幅に削減しようというものである。申請者は、現場製鋼スラグのミクロ組織を詳細に調べ、スラグ中で燐は主に燐酸カルシウムの形態で存在し、燐をほとんど含まない酸化鉄系結晶マトリックス中で、かなり粗大な結晶粒として著しく偏析していることを明らかにした。また、両者が極端に異なる磁気的性質を有することを明らかにし、強磁場を用いて両者を分離する方法を考案し特許申請した。実際に超伝導磁石を用いて模擬スラグからの燐回収を試み、分離・回収率として約60%を達成した。このように、本法の基本原理はほぼ確立されている。本研究では、永久磁石レベルの弱い磁場でスラグからの燐酸カルシウムの分離・回収を達成し、設備・運転コストの大幅な削減を可能にすることで、本法の実用化を目指すものである。平成18年度では、スラグをCO_2のような酸化性雰囲気下で冷却させてスラグのマトリックス相を強磁性体のマグネタイト固溶体に転化させ、その時の相平衡関係を詳細に調べた。その結果、スラグマトリックスをマグネタイト固溶体に転化することは可能であり、冷却後のスラグを永久磁石を用いて処理したところ、燐酸カルシウムリッチ相を約60%の回収率で分離することができた。また物質収支モデルを用いて残渣を製鋼工程にリサイクルした場合の波及効果を定量的に分析した。
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