油分としてラードを用いラードの添加量がコンポスト化に与える影響について検討した。ラードの分解はコンポスト原料中の他の有機物に比べて分解開始に遅れを生じた。また、ラードの分解量はラード添加割合が33%の時に最大となった。なお、ラードを添加したコンポスト化は添加していないコンポスト化に比べてアンモニアガスの発生が大幅に低減され、ラードを添加したコンポスト化は添加していないコンポスト化に比べpHが低下する傾向にあることを確かめた。引き続いて、炭酸ガス基準と重量基準のラード分解率を比較したところ、重量基準の分解率が高く、ラードの分解中間体がコンポスト中に残存していることを確かめた。なお、ラードを添加したコンポスト化でアンモニアガスの発生が低減するのはアンモニアがラードの分解中間体に中和されるためではなく、菌体が増殖する際に窒素分としてアンモニアを取り込んでいるためであることを明らかにした。 さらに、種類の異なる油分としてオリーブオイル、およびヘキサデカンを添加したコンポスト化をおこなって、油分の種類による分解過程の違いを把握することを試みた。オリーブオイルを添加した場合は、ラードを添加した場合と炭酸ガス基準の分解率の経時変化は類似しており、最終的な分解率はほぼ同じとなった。ヘキサデカンを添加した場合、分解率は低いものの、炭化水素もコンポスト化により分解されることを明らかにした。またいずれの油分を添加した場合でも、油分を添加していない場合に比べてアンモニアガスの発生を低減する効果が見られた。なお、微生物叢の遺伝子解析結果、添加する油分の種類が異なると微生物叢遷移も異なって、それぞれの油分について特徴的な微生物が確認され、分解を担う微生物の種類は添加した油分によって異なることを明らかにした。
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