コンポスト原料中に含まれる油脂分の分解を促進する高速コンポスト化の研究過程で、油脂分が活発に分解されているときにアンモニア臭の発生が劇的に低減される。コンポスト化における窒素の収支を詳細に検討し、アンモニア臭の低減効果は油脂の分解中間体にアンモニアが中和されるためのではなく、油脂分解菌の菌体合成にアンモニアが使用されるためであることを確かめた。また、トリブチリンを含有するLBTR培地上で油脂分解微生物を計数したところ、油脂分解微生物はコンポスト化中盤以降に増殖し、アンモニア臭低減効果の発現とよく一致する結果が得られた。なお、LBTR培地上で優勢な好熱性細菌LT1株、およびLT4株を単離し同定した。さらに、微生物叢をDGGE解析装置で解析したところ、油脂分解菌LT1株、およびLT4株と協同して作用する微生物として、新たな微生物DOM-1の存在を確認するとともに、遺伝子の配列情報からDOM-1を同定した。DOM-1は油脂含有培地での生育が確認されず、現在まで純粋培養を確立するに至っていないが、油脂を含まず、アンモニア臭低減効果も見られないコンポスト化ではDOM-1が検出されないことから、DOM-1は油脂分解菌LT1株、およびLT4株との相互作用を及ぼしながら共存しているものと考えられた。また、油脂分解微生物、および油脂分解微生物と協同して働く微生物の初期濃度を高めるために、油脂が活発に分解されているコンポストの製品を種菌として返送したところ、油脂の分解を早めアンモニア臭低減にも効果があることを明らかにした。
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