核融合炉の実現のため、最重要課題はトリチウム増殖ブランケットの開発である。しかし、トリチウム増殖材で生成するトリチウムが運転条件下で、どの程度保持され、どの程度残留するのか評価されていない。本研究では、トリチウム増殖材であるリチウム・タイタネートに重水素イオンを照射して重水素を捕捉させ、捕捉された重水素がどのような温度条件で脱離するかを測定した。この結果から、生成されるトリチウムがどの程度速やかに回収されるか、またどの程度インベントリーとして残るかを明らかにした。 リチウム・タイタネートに室温から800Kまでの照射温度で1.7keV D^+を照射して。照射後、昇温脱離分析でD保持量とDの脱離挙動を調べた。DはLiにより捕捉され、その濃度はD/Li=0.5となった。D保持量は照射温度とともに減少し、800Kでは保持量はゼロになった。 これらの結果から、ITERのテストブランケットモジュールについて、トリチウムインベントリーを見積った。トリチウムが残存する低温度領域が存在するため、少なくても数10gのトリチウム・インベントリーがあることから、ITERの炉内トリチウムインベントリーを増加させる可能性があることが分った。この評価から、トリチウム・インベントリーを減らすため、800K以下の領域を大きく減らす設計が必要であることを指摘した。 得られた結果から、固体ブランケットからのトリチウム回収条件とトリチウムインベントリーが明らかになった。本研究では、フェライト鋼固体ブランケットを対象とした実験ではあるが、この方法はシリコンカーバイド複合材料固体ブランケット、バナジウム合金などの液体ブランケットに対しても適用でき、核融合炉ブランケットの設計手法の確立に大きく貢献できた。
|