トカマク型核融合プラズマ閉じ込め装置において、ELM(エルム)を呼ばれる間欠的にプラズマ対向壁材料に熱負荷が与えられる現象がある。本研究では温度の最大値が融点以下となる条件下で、繰り返し熱負荷が材料に及ぼす影響を評価する。昨年度は、低真空度での繰り返しレーザー照射実験を行い、亀裂の発生条件を実験的に調べた。今年度は、さらに真空度を上げて、酸化の影響を低減して繰り返し熱負荷を与え、表面状態の変化を調べた。レーザーはELMのパルス幅(0.1ms〜lms)に近づけるため、ロングパルスモード(Qスイッチオフ)で運転した。実験における真空度は10^-7Torr程度であり、プラズマ閉じこめ装置の装置真空度に近い。 実験ではレーザーのエネルギーフルエンスを5J/cm^2から100J/cm^2に変化させ、繰り返し照射の影響を調べた。タングステンのエネルギー吸収率は約30%であるため、実効的なエネルギー吸収は、1.5J/cm^2から、30J/cm^2である。 5J/cm^2のエネルギーフルエンスで、高い真空度(10^<-6>Torr)で繰り返し照射を行った場合は、残留圧力が10^<-4>Torrの場合と比較して、亀裂発生の閾値エネルギーや、繰り返し回数に対する依存性には、大きな違いが見られなかった。 タングステン表面の酸化層については、詳しい測定を行っていないが、表面の酸化がある程度以上進まないと、亀裂発生への影響は小さいものと考えられる。さらにエネルギーフルエンスを上げ、50J/cm^2で照射すると、高真空条件下(10^<-6>Torr)でも1ショットで照射部の中央に亀裂の発生が観測された。有限要素法による計算から、この条件で、照射スポット中心に径方向の引っ張り応力が生じ、その大きさが破断応力を越えていることが、原因であると判断した。
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