核融合炉等の大量のトリチウムを使用する施設ではその最外郭に非常時トリチウム回収システムを備えたコンクリート製の建屋が用いられる。従って核融合炉のトリチウム安全対策を保障するためにはコンクリート壁でのトリチウムの透過・移行挙動を移動現象論敵に把握しておかねばならない。 コンクリートの主成分はセメントペーストと砂利および小石であるがその構造の中に多くの水を保持する親水性の多孔質体であるので、申請者がこれまでに確立してきたトリチウムの移行解明研究手法の応用が可能である。以下が18年度の成果である。 1.水素ガス、重水蒸気およびトリチウムガスを用いてのセメント透過実験を行い同位体交換反応の反応速度を定量した。セメントペーストには多くの吸着水と同位体交換容量が存在することが定量的に確かめることができた。 2.幾つかの同じ大きさのセメント円柱形固化体を用い、その一端のみをトリチウム水蒸気に曝露してセメントペースト固化体軸方向へのトリチウムの浸透速度と時間の対応関係を測定した。曝露時間は1日、1週間、1月、3月、6月に変化させた。 3.これまでの研究ならびに本申請の(1)の研究段階で得られたトリチウム移行に関する物質移動諸特性値(吸着速度、吸着容量、拡散速度、同位体交換反応の反応速度、同位体交換反応の容量等)を用い、(2)で得られた実験値について解析を行うとともにトリチウムの移行における拡散係数の確認を行うことができた。セメントペーストが持つ同位体交換容量の存在がトリチウム水蒸気のコンクリート中の移行を大きく低下させることが確かめられた。 4.セメントペーストを通じての水素や重水素の拡散透過は速やかであることが実験的に確かめられた。このことは建屋からのトリチウムの環境へのトリチウム漏洩を抑えるためにはトリチウム回収装置の設置が必要であることを示している。
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