核融合炉等の大量のトリチウムを使用施設ではその最外郭に非常時トリチウム回収システムを備えたコンクリート製の建屋が用いられる。従って核融合炉のトリチウム安全対策を保障するためにはコンクリート壁でのトリチウムの透過・移行挙動を移動現象論的に把握しておかねばならない。コンクリートの主成分はセメントペーストと砂利および小石であるが、その構造の中に多くの水を保持する親水性の多孔質体であるのでトリチウム水蒸気の漏洩挙動は複雑になる。以下が19年度の成果である。 1)水蒸気およびトリチウム水蒸気を用いてのセメント透過実験を行い同位体交換反応の反応速度を定量した。また、セメントペースト、モルタル、コンクリートには多くの吸着水と同位体交換容量が存在することが定章的に確かめられた。 2)コンクリートを作るためにセメントペーストに大量の砂利を混ぜるが、砂利の持つトリチウム捕捉容量を測定したところ砂利の種類により捕捉容量には10倍を超える幅広い分布が見られた。水成岩では大きく火山岩は小さかった。エトリンガイトの生成もトリチウム挙動に影響があることが分かった。 3)昨年度に引き続きセメント円柱形固化体を用い、その一端のみをトリチウム水蒸気に曝露してセメントペースト固化体軸方向へのトリチウムの浸透速度と時間の対応関係を測定した。セメントペーストにペイントを塗布したときの効果を確かめるための実験を開始した。 (4)これまでの研究ならびに本申請の(1)の研究段階で得られたトリチウム移行に関する物質移動諸特性値(吸着速度、吸着容量、拡散速度、同位体交換反応の反応速度、同位体交換反応の容量等)を用い、(3)で得られた実験値について解析を行うとともにトリチウムの移行における拡散係数の確認を行うことができた。
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