核融合炉等の大量のトリチウムを使用施設ではその最外郭に非常時トリチウム回収システムを備えたコンクリート製の建屋が用いられる。従って核融合炉のトリチウム安全対策を保障するためにはコンクリート壁でのトリチウムの透過・移行挙動を移動現象論的に把握しておかねばならない。コンクリートの主成分はセメントペーストと砂利および小石であるが、その構造の中に多くの水を保持する親水性の多孔質体であるのでトリチウム水蒸気の漏洩挙動は複雑になる。以下が20年度の成果である。 1)昨年度に引き続きセメント円柱形固化体を用い、その一端のみをトリチウム水蒸気に曝露してセメントペースト固化体軸方向へのトリチウムの浸透速度と時間の対応関係を測定した。セメントペーストにペイントを塗布したときの効果を確かめるための実験を行った。 2)これまでの研究段階で得られたトリチウム移行に関する物質移動諸特性値(吸着速度、吸着容量、拡散速度、同位体交換反応の反応速度、同位体交換反応の容量等)を用い、得られた実験値について解析を行うとともにトリチウムの移行における拡散係数の確認を行うことができた。また種々の条件についてトリチウムの以降挙動を予測してみたところ、米国のサバンナリバー国立研究所から同研究所での経験と良く対応する旨評価された。 したがって本研究課題では所期の目的を達成することができたと判断している。
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