研究概要 |
放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、地下環境中に存在する不均質な構造を持つ有機コロイドである、フミン物質(フミン酸およびフルボ酸)が放射性核種等の金属イオンとどの程度相互作用するかを評価しておくことが必要である。本研究では、フミン物質と金属イオンの相互作用は、logK_<app>=logK+alogα-blog[Na^+]-mlog[M],K_<app>=[ML]/([M][R])により表わされるとするモデルを提唱した。ここで、[ML]および[M]は錯生成または遊離の状態の金属イオンの濃度であり、[R]はフミン物質中の解離したプロトン交換サイトの濃度である。本モデルの有効性は、文献に報告のある種々の金属イオンと種々のフミン物質のみかけの錯生成定数の実測値に対してモデルを適用することにより確認した。それによると、本モデルはプロトンを含む多くの金属イオンと多くのフミン物質のみかけの結合定数を良い精度で再現することができた。また二電極電位差滴定法により,モデル式中の解離度(logα),ナトリウムイオン濃度(log[Na^+]),および遊離金属イオン濃度(log[M])のうち、注目変数以外の変数を一定に保つことによりpHまたはpM、logαに対するlogK_<app>の依存性を検討した結果も、モデル式の有効性を支持するものであった。各種のフミン物質を用いた実験データに対する当てはめにより得られたモデル式中のパラメータmの値は、錯生成サイトの不均質性を表すとのモデルの考え方を反映するものであり、モデルが化学的に合理的であることを示すものであった。
|