研究概要 |
自然エネルギーである風力発電は事実上枯渇がないことから注目されるが、これ以上の風力発電の導入には出力の平滑化が課題であり、レドックスフロー電池はこの方策を担う電力貯蔵用電池の1つである。ウランは2組の等構造イオン対を有しており、この速い2組の酸化還元対を電池の両極反応として利用ずれば、エネルギー効率の優れた電池が期待できる。エネルギー効率の高い電池を創るためには、ウランV価とIII価の錯体に着目しながら、III価/IV価、V価/VI価の対で等構造の安定なウェルナー型錯体を利用する必要があり、陰イオン性のジアミド配位子に着目した。 第1段階として、N, N, N',N'-テトラメチルマロンアミド(TMMA)のウラン(III)錯体を合成し、元素分析、赤外分光分析により同定した。この錯体の磁性測定より、5f電子の遍歴性の高いことが明らかとなった。N, N-ジメチルホルムアミド中でのウラン(III)錯体の安定性を評価したところ、半減期11時間であることが判明した。この溶液中での電気化学測定により形式電位の決定を行った結果、ウラン(III)TMMAの錯形成が弱いことが明らかとなった。第2段階として、このTMMA錯体の知見に基づいて、陰イオン性が期待できるN, N'-ジメチルマロンアミド(DMMA)を設計し、この配位子の50gの合成を行い、第1段階と同様の検討を行い、分光学的検討により、TMMA錯体より強い錯形成であること、半減期19時間と安定性も優れている事がわかった。また、単結晶X線構造解析装置を設置し、モデル物質であるウラン・テトラケトン錯体の分子構造を明らかにした。 以上の研究により、陰イオン性アミド錯体はウランIII価の安定性の上で有効であることが判明した。今後、この錯体の改良により活物質の有望な候補が得られることが示唆された。
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