研究概要 |
非相同組換え(非相同末端結合)で働くKU70/KU80の遺伝子を破壊した細胞を用いることにより,遺伝子ターゲッティング効率が極めて高い結果が得られることをアカパンカビで発見した。非相同末端結合はDNAの二本鎖切断修復で働く主な機構の1つであるが,この中にはDNAリガーゼIV,XRCC4なども含まれる。そこでDNAリガーゼIV,XRCC4などを欠損しているアカパンカビの株を作成し,これらの株でのターゲット効率を測定したところ,ターゲット効率はKU破壊株と同じく100%であった。更にLIGIV波壊株では,KU株よりも相同部分が短くてもターゲット効率が高いことが判明した。この結果はAspergillus oryzaeに適応された。A.oryzaeではKV破壊株を使っても100%のターゲット効率は得られなかったが,LigD破壊株を用いると100%の効率を得ることができた。A.oryzaeでこのような結果を得たことは,このカビが味噌,醤油,酒などの食料生産に使われていることを考えると,その意味は大きい。一方,相同組換えと非相同組換えの上位で機能するとされているMRX(Mre11,Rad50,Xrs2)複合体が,ターゲットの上でどのような効果を持つかをアカパンカビで調べた。複合体は細胞外からのDNA断片を相同組込に導くことが明らかになったが,MRXと非相同組換え欠損変異との二重変異株を用いるとわずかながら相同組換えがみられた。これらの研究結果を考えあわせると,細胞外からのDNAはゲノムに組み込まれるとき,主な経路として相同組み込みと非相同組み込みがあり,それ以外にあまり目立たないが主経路の相同組み込みや非相同組込とは違った相同組み込み系,非相同組み込み系が存在することが明らかになった。
|