研究概要 |
生物の形質は遺伝子によってのみ一義的に決まるわけではなく, 取り巻く環境条件に応じて状況依存的に形質を発現したり修飾したりする. しかしどのような生理発生機構によりそのようなしなやかな形質発現が行われているかは未解明であった. 本研究課題では, 表現型可塑性を発揮する節足動物のいくつかの種を用い, 化学物質によるコミュニケーション, 環境要因を介する生理機構, 発生プログラムの改編機構と, 段階的に焦点を当て, 分子生物学や生化学的手法を用いて, 研究を進めてきた. シロアリやアブラムシ, ミジンコなどで, フェロモン様物質の同定, 幼若ホルモン濃度の変動パターン, 発生制御因子の発現動態などの成果を得ることに成功した. 結論として, 既存の発生・生理機構に用いられている分子機構を上手く応用することにより, 変動する環境に対応した適応的な可塑性を発揮するメカニズムが存在することが強く示唆された.
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