研究概要 |
本年度までに、グッピーのオプシン遺伝子の8遺伝子座のうち、LWS CRH1,RH ' ' -A,RH ' ' -B,SWS1,SWS2の吸収波長を特定することができた。現在、多型を示す遺伝子LWSA,およびLWSBの吸収波長の特定を行っているところである。 オプトモータ反応による光感受性の測定と雌の選好性実験を開始した。オプトモーター反応では、560nm付近の波長に対して感受性の高い個体と低い個体がいることが明らかになったが、その感受性とオプシンの遺伝子型との関係は、現在解析中である。 選好性実験は、雄のカラースポットの測定を行った上で、1匹の雌に対して、12匹の雄を示し、雌がどの雄を選好するかを調べた。雄のカラースポットは、オレンジスおよび黒スポットの明度および彩度、面積を測定した。沖縄から採集した個体は黒スポットの大きい雄を好む傾向がみられた。しかし、その違いが遺伝子型による違いであるかどうかを示すためには、さらに個体数を増加させて実験する必要がある。また、オプシン遺伝子型がホモ接合である個体は、一般に選好性が低いことがわかったが、これも個体数を増やした実験が必要である。 本年度は、また、実験に使っている沖縄および静岡の個体群の起源を調べるために、ミトコンドリア遺伝子を使った系統解析を行った。その結果、沖縄への移入は、複数回にわたって独立に起こっていることが明らかになった。それに対して、静岡の個体群は、一回の移入での定着である可能性があった。集団でのオプシン遺伝子の多型の維持は、静岡個体群においても生じていることから、多型は、複数移入による要因以外の要因が関係している可能性が示唆された。
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