研究概要 |
本年度は、赤型オプシン遺伝子のうち、2遺伝子(LWS-A,LWSB)について塩基配列がプライマーで読めるようになり、グッピーの原産地であるトリニダッドの2集団(Pitch LakeとAripo Liver)のサンプルを用いて、配列比較を行った。Pitch Lakeは、陰がなく、均一な光環境を示すのに対し、Arip Liverは、樹幹による陰ができる光環境の不均一な環境である。各集団45個体のLWS-A,LWS-Bのエキソン領域の配列を決定した。LWS-Bの配列は、Aripo Liverにおいて、661番目の非同義部位で、AとGが同頻度で観察されたが、Pitch Lakeでは、多型部位は多かったがほとんどが同じalleleで占められていた。LWS-Aでは、LWS-Bほど多型は見られたなかったが同じ傾向にあった。Tajime's Dは、Lower Aripo Riverにおいて、LWA-A=0.3085,LWS-B=1.10,Pitch Lakeにおいて、LWA-A=-2.03,LWS-B=-0.697であり、Pitch LakeのLWS-Aの値は有意であった。また、Pitch LakeとAripo Liverの間のFSTは、LWS-Aで0.628、LWS-Aで0.490であった。これらのことから、光環境が不均一なLWS-Bでは平衡淘汰による多型の維持が光環境が均一なPitch Lakeではpurifying selectionが働いている可能性があることがわかった。今後、さらに、環境の異なる野外集団を増やすこと、中立の遺伝子の値と比較をすること、さらに.LWS-Cの配列を読むことによって、グッピーのオプシン遺伝子の多型の維持に関係する選択をより確実に検出できるものと思われる。
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