研究概要 |
1.マカランガ属植物に共生するカイガラムシのmtDNA COI系統樹について,植物との種特異性の高い,祖先的なカイガラムシ系統のサンプルを追加して150サンプルについて解析をおこなった.この結果,カイガラムシは6つの系統に分かれた.マレー半島とボルネオ島のカイガラムシは互いに大きくふたつに分岐し,共生アリの系統樹とその点で一致した. 2.それぞれのカイガラムシmtDNA系統の植物・アリに対する種特異性は低く,共種分化仮説は棄却された.また,共生カイガラムシの起源年代(9-11Mya)は共生アリのそれ(16-20Mya)と比べて新しいことが判明した. 3.カイガラムシ210サンプルについて核DNAのWingless遺伝子およびEF-1α遺伝子の塩基配列を決定し,核DNA系統樹を作成した.その結果,mtDNAにおいて別系統に属していた同じ形態種のカイガラムシが単系統となり,過去に浸透交雑が起こっていたことが強く示唆された. 4.マカランガ共生アリのmtDNA COI系統樹から、その多様性の起源はボルネオ島であり,多くの種が第三紀にスマトラ島を経てマレー半島へと分散したこと,第四紀における氷期のレフュジアはボルネオ島北西部,およびマレー半島とスマトラ島の山岳地帯に存在し,これに対してマレー半島とスマトラ島の低地に分布するアリ集団は,ボトルネックを経て最近個体数と分布の急激な拡大をおこなった形跡があること,などが明らかになった. 5.ボルネオ島ランビル国立公園においてサンプリングをおこない,アリとカイガラムシの体表面炭化水素を分析した.アリについては種特異的なプロファイルが認められた.また,植物の乾燥サンプルからDNAを採取し,各種DNAマーカーによるPCRを開始した.
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