研究課題
(1)アリ植物オオバギ属の共生カイガラムシについてmtDNA系統間の分岐年代の推定から、カイガラムシがオオバギーアリ共生系へ進出した年代が約800万年前であることを明らかにした。この年代はアリとオオバギ植物の共生が始まった時期(約2000万年前)よりも遅いことから、一般的なアリと植物の共進化について従来想定されてきた仮説、すなわち「植物-アリの共生系が起源するにあたって、アリに餌を提供するカイガラムシは必須の存在であり、したがって三者の共生の起源は一致するはずである」が否定される結果となった。しかし、いったん共生カイガラムシが起源して以降は、アリとの間での分化・多様化の時期はおおむね一致していることから、両者が密接な関係をたもちながら同時期に多様化してきたことが示された。一方、共生カイガラムシー共生アリのmtDNA系統レベルでの特異性は低く、アリ-植物間におけるような緊密な共種分化は検出されなかった。(2)分子地理系統解析の結果、共生カイガラムシは400万年前以降の鮮新世から更新世にかけてボルネオ島とマレー半島の間をくり返し移住したことが判明した。このようなパターンは、共生アリと共通したものである。さらに、ボルネオ北部において共生カイガラムシ系統の多様性がもっとも高いという、これも共生アリと共通の結果を得た。以上のことからボルネオ北部に氷期の避難地(レフュジア)が存在したこと、また間氷期にそこからの分布拡大が複数回おこったことが示された。
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Proceedings of the Royal Society B 275
ページ: 2319-2326