研究概要 |
生態系動態と人間の社会経済的動態とをカップリングさせた数理モデルを展開し、その研究成果を論文としてとりまとめ、既にEcological Economicsに印刷中となっている。 湖の水質改善に、住民や農業従事者、事業者などの多数の人々の協力が必要な状況を想定し、それぞれのプレイヤーがリンの流出濃度の高い経済的行動と流出のすくない環境にやさしい行動の間で選択するとした。人々の公共の益に寄与したいとする心理傾向を表すため、効用の項に「社会的圧力」を加え、それが大きいほど人々は環境を改善する行動をとる傾向があるとする。そこで、[1]社会の中で湖水の汚染が頻繁に話題に上り,問題の重要性が感じられているほど社会的圧力は強まるとすることである。これは人々が社会にとっての益に貢献することが確かなほど協力意欲を持つことに対応している。[2]他のプレイヤーが協力するほど社会的圧力が強まることで、これは人々の順応主義傾向を表す。人々の選択は、結果として水質の変化をもたらし、水質悪化は社会の関心を高め、人々の行動選択にフィードバックする。 多くの人が協力するため協力から抜け出ることが難しく水質が高く保たれる状態、逆にだれも協力しないためにだれも協力しようと思わないで、水が汚染されたままの状態が、いずれも安定になる傾向がある。また意外なパラメータ依存性を示す。技術が准歩してリンを効率よく除去することができるようになると、湖水の水質が改善されるはずと思われるかもしれないが、その結果として人々の関心が低下し、逆に水質が低下する場合がある。これは人々の協力への関心に注意を払わないと生態系管理は成功しないことを示している。 また泥の巻き上げや植生帯の効果によるレジームシフトが知られているので、この非線形性を取り込んだ解析をおこなって、第2論文を投稿した。 このほか、森林の空間動態の研究、森林伐採において所有者の経済的決定と生態系回復を結合したモデルの研究、最適保全努力の理論から、体内での進化プロセスとして発癌の研究までさまざまな研究成果があがった。
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