研究課題/領域番号 |
18370012
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
辻 瑞樹 琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)
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研究分担者 |
長谷川 英祐 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教授 (40301874)
松浦 健二 岡山大学, 環境学研究科, 助手 (40379821)
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40178950)
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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キーワード | 社会性昆虫 / 単為生殖 / アリ / シロアリ / 利己性 / 利他性 / 性 / 進化 |
研究概要 |
アミメアリにおける利己的社会寄生者の進化ダイナミクスを、空間構造を考慮したコロニーべ一ス・モデルで解析した。アミメアリの場合、産卵能力がある閾値以上になると、利己者が周囲の利他者のコロニーを早々と滅ぼしてしまうので、局所消滅-再移住過程によって、大局的には利己者も利他者も共存することが予測された。そして、両型の繁殖速度の実測から、共存領域に入っていることが分かった。また、全国101箇所で採集を行い9箇所から社会寄生型とされる単眼大型アミメアリを発見した。このうち32個体群を使用してmt-DNAの4領域2858bpを用いた分子系統解析を行った結果、単眼大型の遺伝子型は大きく分かれた2つの系統の両方に存在し、少なくとも2回の独立進化を示唆する結果となった。また、2つの系統は全国にモザイク上に分布し、この地理的な分布が社会寄生型の進化に関わる可能性が示唆された。 ウメマツアリの長翅型、短翅型を共に含む個体群で、両型の雌雄の繁殖パターンを調べた。4つのマイクロサテライト遺伝子座を用いた解析結果では、短翅型女王とそこで生産されるオスは別の系統群であり、メスの単為生殖が示唆されただけでなく、オスも受精卵中のメスゲノム排除によるクローン増殖をしているものと考えられた。キイロヒメアリとトカラウロコアリの野外における分布や行動生態を調査した結果、いずれも多女王制で未受精女王が単為生殖によってメス個体を産出していた。 ヤマトシロアリでは群飛後に雄と遭遇できなかった雌が、2個体の雌同士で共同創設し、単為生殖を行う。このような2雌創設コロニーは、異なる2つの母系メンバーの混合となる。このような高い血縁対立の存在下では、繁殖虫生産を巡る競争が起こり、通常よりも早期にニンフや補充生殖虫の生産が開始されることを発見した。これはシロアリにおいて血縁度依存的な利他行動調節の証拠を初めて示したものである。
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