本研究では液胞や細胞骨格などの細胞内構造をGFPなどにより可視化した可視化観察系を確立し、それらの実験観察系を用いて以下のように細胞周期や環境応答などの状況下で、細胞内構造の動態を生細胞で経時観察し、画像情報処理による解析を行った。以下に主な成果を記す。 「2重可視化系の確立と高等植物の分裂機構の解析」微小管と細胞核・染色体の2重可視化BY-2細胞を用いて細胞分裂中期~後期の解析を行い、後期の紡錘体伸長を測定し、高等植物細胞では紡錘体伸長による染色体移動への寄与(後期B)が約40%であることを明らかにした。 「液胞の動態および細胞板の発達におけるアクチン繊維の機能解析」アクチン繊維を可視化したBY-2細胞の液胞膜および細胞板をFM4-64により生体染色し、その動態をタイムラプスイメージングを基に画像解析して、液胞の動態および細胞板の発達におけるアクチン繊維の機能解析を行った。その結果、液胞の動態は高等植物では微小管ではなくアクチン繊維に依存すること、また細胞板の発達についても娘核近傍から細胞板の方向に向かうアクチン繊維の出現と細胞板への縁取りが明らかになった。 「気孔の開閉に伴う液胞と細胞骨格の構造・機能解析」気孔開閉時の孔辺細胞の制御機構について検討し、サイトカイニンおよびオーキシンはエチレンの合成を介してABAによる気孔閉鎖を阻害することを見出した。また、液胞構造を可視化したシロイヌナズナを用いて、立体再構築による定量解析を行い、気孔開閉における液胞の寄与を明らかにした。一方、気孔の開閉に関するアクチン繊維の機能解析を行うべく、アクチン繊維を可視化したシロイヌナズナ形質転換体を作出し、その共焦点像からアクチン繊維の配向を定量的に解析する手法を考案し、表層アクチン繊維の配向と気孔開閉の関係を解析した。
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