研究課題
シロイヌナズナの各種突然変異体を利用して、RNAダイナミズムの観点から脱分化・細胞増殖再活性化過程の研究を行い、平成18年度は以下の結果を得た。1.脱分化の細胞増殖能獲得段階に関し強い温度感受性を示す突然変異体rid1の責任遺伝子RID1を確定し、プレmRNAプライシングへの関与が推定されるDEAH型RNAヘリカーゼをコードしていることを明らかにした。snRNA転写活性化因子の温度感受性変異体srd2の脱分化に関わる表現型と合わせ、snRNA蓄積の増大とそれに依存したスプライシング活性の上昇が増殖能獲得に必須であることが強く示唆された。2.rid2変異体の詳細な表現型解析により、カルス形成過程でRID2が細胞増殖能の獲得、再開した細胞分裂の活性化・安定化の少なくとも2点に作用することを示した。rid2変異による脱分化阻害が核小体の膨潤と細胞の歪な肥大をもたらすことを明らかにした。なお、rRNAの合成あるいはプロセッシングへの影響も疑われたが、rRNAの電気泳動パターンに異常は検出されなかった。RID2タンパク質の解析にも着手し、GFP融合RID2が核に局在することを確認した。3.遣伝子発現に関するSRD2、RID1、RID2の関係を調べた結果、これらの間に上下関係は認められず、脱分化に際して各遺伝子の発現が並行して上昇することがわかった。4.rid2の温度感受性の抑圧、SRD2の発現パターンの異常、プロモデオキシウリジンの脱分化阻害作用に対する耐性などを指標に新たな変異体を探索し、また各種マーカー遺伝子、レポーター遺伝子を構築して、平成19年度以降の研究の準備を進めた。
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Plant Cell, Tissue and Organ Culture 87・1
ページ: 17-25