研究課題
ベタレイン色素はナデシコ目の多くの植物が合成蓄積する植物色素であるが、これらのベタレイン色素を合成する植物はアントシアニンを合成蓄積しないことが知られている。この二律背反性の謎を解く手がかりの一つはベタレイン色素合成に関わる最も重要な酵素であるDOPA 4,5-dioxygenase(DOD)遺伝子について解析することである。これまでの研究で、高等植物におけるDOD遺伝子は2004年にマツバボタン(Portulaca grandiflora)の花弁を用いたcDNAサブトラクション法によって単離され、マツバボタン花弁におけるパーティクル・ガン法によってその活性が確認されていたが、組換えタンパク質における酵素活性はこれまで検出されず、このため生化学的な性質は未解明のままであった。そこでオシロイバナからdegenerate primerを用いたPCRによってDOD相同遺伝子(MjDOD) cDNAを獲得した。このcDNAを酵母発現ベクターに導入し、酵母に形質転換し、酵素活性について検討したところ、ベタラミン酸が生成していることが確認され、試験管内で酵素活性の測定が可能となった。さらにベタレイン色素を合成しない植物種であるアラビドプシス、トレニア、カーネーションにおいてもDOD相同遺伝子が存在していることを見いだし、これらに対するcDNAを単離した。これらを組換えタンパク質発現系に導入して得られた組換えタンパク質について、その酵素活性を検討したところ、トレニア由来のTfDODがDOPAを基質としてベタラミン酸を合成していることが示唆され、ベタレイン合成蓄積を行わない植物種においても試験管内ではベタラミン酸を合成することができるDOD相同遺伝子を有していることが明らかになった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
J. Plant Res. 119巻・2号
ページ: 137-144
Plant Science 170巻・3号
ページ: 828-834
J. Plant Res. 119巻・3号
ページ: 217-230