本年度は、(1)FD依存の経路の解析、(2)FD非依存の経路の解析、(3)FT遺伝子産物の葉から茎頂への移動の解析、を進めた。(1)に関しては、FD蛋白質活性のリン酸化による調節の可能性を検討するため、シロイヌナズナゲノムに存在する34個のCa^<2+>-依存蛋白質キナーゼ(CPK)遺伝子のうち、茎頂においてFD遺伝子と共発現しているものを選抜し、FD蛋白質との相互作用能を酵母2ハイブリッド法を用いて調べた。その結果、CPK7、CPK12、CPK13が茎頂において発現しており、FD蛋白質と酵母細胞内で相互作用し得ることがわかった。これらのCPKによるFD蛋白質のリン酸化の検証が今後の課題である。fd変異体の遺伝解析はほぼ完了し、論文公表の準備を始めつつある。(2)に関しては、fd変異体背景でFT活性を誘導する系を用いて、SOC1遺伝子がFDに依存しないFT下流の早期標的遺伝子であることを確認するとともに、他のいくつかの候補遺伝子を見いだした。また、FT蛋白質と相互作用するFD蛋白質以外の転写因子として、TCP転写因子に属するものをいくつか同定した。これらの転写因子は、FD非依存の経路を構成する因子の候補である。(3)に関しては、熱ショック蛋白質プロモーターを用いた一過的・局所的な発現誘導系により、一枚の葉の葉身で発現を誘導したFT:T7蛋白質が誘導後24時間で茎頂で検出可能になることを見いだした。前年度に得ているmRNAに関する結果とともに、論文公表の準備を進めている。
|