(1)FD依存の経路の解析、(2)FD非依存の経路の解析、(3)FT遺伝子産物の葉から茎頂への移動の解析を進めた。(1)に関しては、FD蛋白質活性のリン酸化による調節の可能性を検討するため、シロイヌナズナゲノムに存在する34個のCa2+依存蛋白質キナーゼ(CPK)遺伝子のうち、茎頂においてFD遺伝子と共発現しているものを選抜し、FD蛋白質との相互作用能を酵母2ハイブリッド法を用いて調べた。その結果、CPK7、CPK12、CPK13が茎頂において発現しており、FD蛋白質と酵母細胞内で相互作用し得ることがわかった。これらのCPKによるFD蛋白質のリン酸化の検証が今後の課題である。fd変異体の遺伝解析はほぼ完了し、平成21年3月現在、2報の論文公表の準備を進めているろ。(2)に関しては、fd変異体背景でFT活性を誘導する系を用いて、SOC1遺伝子がFDに依存しないFT下流の早期標的遺伝子であることを確認するとともに、他のいくつかの候補遺伝子を見いだした。また、FT蛋白質と相互作用するFD蛋白質以外の転写因子として、TCP転写因子に属するものをいくつか同定した。これらの転写因子は、FD非依存の経路を構成する因子の候補である。(3)に関しては、まず、FT:T7蛋白質が接ぎ木面を経て接ぎ穂から台木に輸送されること、この輸送にともない、台木の花成促進が観察されることを示した。さらに、接ぎ木面を介したFT:T7蛋白質の輸送は接ぎ穂における誘導の24〜48時間後には認められることを示した。これらは、研究期間終了後に3報の論文として公表した。本研究により確立した熱ショック蛋白質プロモーターを用いた一過的・局所的な発現誘導系を用いて、一枚の葉の菓身で発現を誘導したFT:T7蛋白質が誘導24時間後には茎頂で検出可能になることを見いだしており、2報の論文公表の準備を始めている。
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