phs1-1半優性変異株をEMS突然変異処理して得られた複数のextragenicサプレッサー系統のうち、野生型形質への復帰程度が強いものから順にマッピングを試みたが、一群の系統については通常のメンデル遺伝様式を示さず、通常の方法ではマッピングができなかった。他の系統については、チューブリンのミスセンス変異であることが判明した。 全長PHS1(野生型とphs1-1変異型)をbaitとして用いてアラビドプシスcDNAライブラリーをスクリーニングしたが、ポジティブなクローンは得られなかった。 PHS1の脱リン酸化活性に必須のアミノ酸残基を変化させて植物体で発現させると、ドミナント・ネガティブ的に表層微小管を強力に脱重合させることを見出した。この効果はPHS1に特異的であり、アラビドプシスの他の4種のMAPKフォスファターゼの変異型を同様に発現させても、微小管に影響はなかった。また、PHS1は積極的な機構で細胞質に保持されており、この細胞質保持には脱リン酸化活性ドメインを含まないC末端部分が必要充分であった。恐らく、PHS1は細胞質で微小管関連因子を脱リン酸化しているものと考えられる。 一方、PHS1の下流リン酸化因子の検索の程で、βチューブリンのセリン172がリン酸化されること、CDKがin vitroでこのリン酸化を触媒すること、アラビドプシスのTON2 PP2Aフォスファターゼ変異株ではこの部位をリン酸化されたβチューブリンが顕著に増大していることを見出した。
|