研究課題/領域番号 |
18370022
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
徳富 光恵 (宮尾 光恵) 独立行政法人 農業生物資源研究所, 植物科学研究領域・光環境応答研究ユニット, 上級研究員 (70181980)
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研究分担者 |
深山 浩 神戸大学, 大学院・農学研究科資源生命科学専攻, 助教 (60373255)
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キーワード | 葉緑体 / ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ / 解糖系 |
研究概要 |
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)は、細胞質に局在し、TCA回路に基質を補充する機能をもつと考えられていた。本研究の目的は、イネで新たに発見された葉緑体局在性PEPCについて、その発現様式と酵素特性、ならびに、イネ代謝における役割を明らかにすることである。これまでに、葉緑体型PEPC遺伝子(Osppc4)は葉身と葉鞘では葉肉細胞で特異的に発現すること、子房では緑色柔細胞に加え、維管束でも発現することがわかっている。本年度はOsppc4の機能解明に向け、発現抑制形質転換イネの解析を重点的に行った。 1.Osppc4発現抑制イネの解析 (1)RNAi法でOsppc4の発現を抑制すると、葉身の最大PEPC活性が約2/3に低下した。細胞質型遺伝子Osppc2aの発現を抑制するとPEPC活性は約1/3に低下したことから、葉身全PEPCの約1/3が葉緑体型、約2/3が細胞質型であることがわかった。 (2)Osppc4発現抑制イネでは、子実の登熟が遅れ収量が低下した。穂の培養実験の結果から、この登熟障害はシンク器官(穂や籾)ではなくソース器官(葉身と葉鞘)での発現抑制に起因することがわかった。一方、Osppe2aの発現を抑制しても登熟はほとんど影響を受けなかった。 (3)Osppc4発現抑制イネ葉身のトランスクリプトームと主要有機酸レベルに若干の差が認められたものの、最大光合成速度とショ糖転流能は非形質転換イネとほとんど変わらなかった。これまでのところ、登熟障害を引き起こすソース器官の機能障害の特定には至っていない。 2.Osppe4の発現様式の解析(RT-PCR法) すべての器官で発現が認められたが、葉身と葉鞘で強い発現を示すことがわかった。また、葉身では、活発に光合成を行っている部位あるいは時期に高発現することが確認された。 3.他のイネ科植物の葉緑体型PEPC遺伝子の検索 5'-RACE法によりトランジット配列をもつPEPCmRNAを検索した。日本型イネ(AA型ゲノム)以外にも、インド型イネ(AA型)とイネ野生種(AA型とCC型)では確認できたが、オオムギとトウモロコシでは確認できなかった。このことから、葉緑体型PEPC遺伝子はOryza属に特異な遺伝子である可能性が示された。
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