中心体を持たない植物細胞がどのようにして微小管を作るのかは長年の謎であった。我々は、間期の細胞において微小管は既存の微小管から斜め40°の角度で伸び出すこと、この微小管枝分かれ形成においては、微小管重合核の構成因子γチューブリンが働くことを示した(Murata et al.2005)。本研究課題においては、植物の細胞質分裂に枝分かれ微小管形成が働くか、もし働くとしたら枝分かれで形成された微小管はどのように再編成されるのかを解析した。 1タバコ培養細胞の細胞質分裂におけるγチューブリンの役割 マイクロインジェクション法を用い、タバコ培養細胞に抗γチューブリン抗体を注入することに成功した。抗γチューブリン抗体は細胞板、および細胞板合成に働く複合体である隔膜形成体の拡大を阻害した。伸長中の微小管先端のマーカーであるGFP-AtEB1bを用いて、抗γチューブリン抗体の微小管伸長に対する効果を調べたところ、抗γチューブリン抗体は伸長中の微小管の数を大きく減らすことがわかった。隔膜形成体中には抗γチューブリン抗体で標識される微小管分枝構造があること(前年度までの成果)から、微小管枝分かれ形成が隔膜形成体の発達を介して細胞板の発達に働くことが示された。 2ヒメツリガネゴケにおける隔膜形成体発達の分子機構 隔膜形成体架橋因子API1の解析を進めた結果、シロイヌナズナのオーソログ遺伝子PAKRP2ではAPI1遺伝子破壊株を相補できないことがわかった。この結果を含め、Plant Cell誌に研究成果を発表した(Hiwatashi et al.2008)。微小管安定化因子PpUBLについては、遺伝子破壊株での微小管の動態を現在解析中である。
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