研究概要 |
本研究では,連鎖地図ベースで,ハイマツとキタゴヨウの交雑体における遺伝子浸透のパターンを解析することを目的とする。裸子植物の種子の胚乳は雌性配偶体であるため,1個体から得られた種子における対立遺伝子の1:1での分離を利用して,連鎖地図の作成が可能となる。連鎖地図作成のための分子マーカーとしてESTマーカーとAFLPマーカーを用意した。ESTマーカーは,62個の作成に成功した。そのうち21個は,テーダマツの連鎖地図における位置がわかっており,両者の連鎖群の対応付けに利用できる。AFLPマーカーはRemington, et al.(1999)1こよって用いられた(E+3/M+4)の選択プライマー21組を用いた。 JoinMap4を用いてLOD7で連鎖地図を作成した結果,419個(うちEST57個)のマーカーを19の連鎖群に配置することができた。地図の推定長は1639cMであり,これはテーダマツ(1742cM)やヨーロッパアカマツ(1719cM)の結果にほぼ対応する。 テーダマツの連鎖群との対応についてはLG1-LG11の11連鎖群と対応をつけることができた。マーカーの並び順もほぼテーダマツと同じであり,マツ属のマツ亜属とストローブ亜属の間でシンテニーが保全されていることが判明した。 AFLPマーカーの連鎖群ごとの密度については,均等に分布しておらず,これはAFLPマーカーでアーティファクトを拾ってしまっている結果ではないかと考えられる。今後,AFLPについては再実験を行い,再現性の高いバンドのみを用いることによって,連鎖地図の信頼性の向上を図りたい。
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