研究課題
南硫黄島や北硫黄島は隔絶された位置や急峻な地形など島の厳しい自然環境が人を寄せ付けず、父島や母島などの小笠原群島に比べて良好な自然環境が残されている。これらの島は小笠原群島に比べて標高が高く、600m以上は常に雲がかかる雲霧帯となっているため、島の上部と下部では水分環境などが大きく異なっている。また火山列島の形成年代(数千年〜数万年前に陸化)は、小笠原群島の成立年代(100万年以上前に陸化)に比べて非常に新しいことから、この島の生物集団は適応放散的種分化の初期過程の段階にある可能性がある。本研究では、調査機会の極めて少ない南硫黄島の生物多様性と自然環境の現状を把握するため、動植物や地形地質などの専門家を研究協力者として加え、「南硫黄島生物多様性調査」(仮称)を実施する。また現地調査において植物集団の標本試料とDNAサンプルを採取し、適応放散的種分化の初期段階における集団の形態的・遺伝的多様性のパターンを明らかにする。加えて、北硫黄島など他の島々の集団の解析を通して、移入の歴史や集団の形成過程を比較・推定し、形態的特徴や遺伝的分化に基づく分類群の位置付けについても検討する。平成18年度は、平成19年6月に予定している南硫黄島現地調査を安全に遂行するため、10月に予備的な現地視察を行い、上陸ポイントやべ一スキャンプ地、および登山ルートの状況確認を行った。また、25年前に環境庁(当時)が実施した同島の調査隊メンバーからのヒアリングを行い、併せて研究協力者の選定と打ち合わせを行うなど、可能な限り具体的な情報に基づく行動計画を策定した。種分化研究に関しては、シロテツ属(ミカン科)やムラサキシキブ属(クマツヅラ科)などについてSSRマーカーを作成し、小笠原群島と北硫黄島のサンプルを用いて、予備的な解析を行った。
すべて 2007
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Conservation Genetics in press