研究課題
本研究はSUMO (Small Ubiquitin-like Modifier)化によるたんぱく質の機能変換・制御を構造学的に明らかにする事を目的としている。SUMOは、ユビキチン同様にそのC末端が基質たんぱく質のリジン残基とイソペプチド結合を形成する事で働く、翻訳後修飾(modifier)たんぱく質である。SUMO化は基質たんぱく質に依存した機能変換を行うが、この基質たんぱく質依存性は、SUMO化が基質たんぱく質とそれを認識する因子(標的分子)間との相互作用を変化させるためであると考えられる。既知の全ての生物においてユビキチンが一種類であるのと対照的に、哺乳類はSUMO-1〜4の4つのアイソフォームを持つ。こういった背景のもと、本研究では1)SUMO化による構造リモデリングを介したたんぱく質-DNA相互作用の調節、2)SUMO化された転写因子によるクロマチン構造制御とSUMOアイソフォームの機能、3)SUMO化による転写活性化における共働効果の制御、の3つのサブテーマが掲げられた。1)に関しては、平成18年度は、チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)の中央領域(残基112-339)とSUMO-1の非共有結合的な複合体、即ちSUMOのC末端がTDGと共有結合していない状態、の結晶構造解析を行い、先に決定していたTDG中央領域とSUMO-1の共有結合的な複合体の結晶構造と比較した。またAsp323をアラニンに変異したTDG中央領域とSUMO-1の非共有結合的な複合体の結晶構造解析と、TDGの残基112-314の領域、単独での結晶構造解析を行った。後者では残基301-314の領域は結晶中では一定の構造を持たないことが示された。またHSF2の系について、SUMO-1化されたHSF2 DNA結合領域を調製し、NMRスペクトルの測定とDNA結合活性の解析を進めた。2)に関しては、メチル化DNA結合タンパク質MBD1に結合するMCAF1の持つSUMO-interacting motif (SIM)に関する研究を行った。MCAF1はSUMO化されたMBD1により強く結合する。我々は、MCAF1のSIMを含むペプチドとSUMO-3複合体の溶液中での立体構造をNMRにより決定した。
すべて 2007 2006
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Journal of Magnetic Resonance 184
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