研究課題
基盤研究(B)
哺乳類ミトコンドリア膜中に存在する複合体IIは4つのサブユニット、親水性サブユニット(Fp、 Ip)と膜貫通サブユニット(CybL、 CybS)から成り、コハク酸のフマル酸への酸化反応に共役してユビキノンをユビキノールに還元する反応を触媒する。一方、嫌気的条件下で生息する回虫成虫の複合体IIはロドキノールを酸化することでフマル酸をコハク酸へ還元する。本研究では、回虫成虫ミトコンドリアから界面活性剤で可溶化した複合体IIを精製・結晶化し、X線解析で明らかにした立体構造をもとに、その構造・機能相関について研究を行った。X線解析可能な結晶は2種類の界面活性剤、オクタエチレングリコールモノオクチルエーテルとドデシルマルトシド共存下で得ることができた。立体構造は、SPring-8のBL44XUで測定した2.8Å分解能の回折強度データを使って、ブタ複合体IIの構造をもとに分子置換法で決定、精密化した。回虫成虫複合体IIはこれまでにX線解析されている大腸菌やブタ複合体IIと基本的には同じ構造をしており、特にキノンとフマル酸やマロン酸の結合部位をつなぐように配置している補欠分子族(鉄-硫黄クラスターやFAD)と接触しうる距離にあるアミノ酸残基は種を越えてほぼ完全に保存されていた。また、フマル酸は様々な水溶性のフマル酸脱水素酵素に見られるように、平面ではなくねじれたコンフォメーションでFADと相対するようにFpサブユニットに結合していた。一方、ロドキノンはIp、 CybL、 CybSで形成されるポケットにいくつかの水素結合を介して結合していた。これらの立体構造情報をもとにして、ロドキノールが酸化されフマル酸が還元sれる機構について知見を得ることができた。
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