研究課題
銅アミン酸化酵素はビルトイン型キノン補酵素の一種、トパキノン(TPQ)と2価銅イオンを活性部位に含有し、一級アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する。本酵素の触媒過程はping-pong機構で進行し、前半の還元的半反応においては、基質アミンはTPQのC-5位のカルボニル炭素に結合し、基質-TPQシッフ塩基(SSB)を形成する。次いで、活性部位の触媒塩基(保存性Asp残基)により基質のα位炭素から立体特異的にプロトンが引き抜かれ、生成物-シッフ塩基(PSB)が形成される。我々は、これまでに土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅アミン酸化酵素(AGAO)を用い、本酵素反応における基質アミンのα-水素の引き抜きに対する立体特異性について検討し、本酵素反応ではpro-S水素が立体特異的に引き抜かれることを明らかにした。本年度は、大きな遠位部分をもたない基質であるエチルアミンの2個のα-水素を立体特異的に重水素標識し、AGAOによるα-水素引き抜きの立体選択性を解析した。その結果、フェニルエチルアミンやチラミンなど大きな遠位部分(ベンゼン環)をもつ基質の反応においては、α-水素の引き抜きがいずれも99%以上の高い立体選択性でpro-S水素特異的に進行するのに対し、エチルアミンではpro-S水素選択性が86%にまで低下していた。また、エチルアミンを用いて得られたSSBのX線結晶構造では、SSBに相当する部分の電子密度が非常に低く、コンフォメーションが一定ではないことが示唆された。以上の結果より、銅アミン酸化酵素によるα-水素の引き抜きの立体選択性はSSBのコンフォメーションにより一義的に決定されると考えられた。
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Biochemistry 47(29)
ページ: 7726-7733
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/smb/tpq2.htm
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/smb/new_page_9.htm