研究概要 |
カブトガニの生体防御において、ファクターGは真菌の表層成分であるβ-1,3-グルカンを認識し、体液凝固を引き起こす。ファクターGは、α、β二つのサブユニットから成るセリンプロテアーゼ前駆体であり、αサブユニットのキシラナーゼZ様ドメインの二回繰り返し部分(Z1、Z2)によって、β-1,3-グルカンを認識することが判明している。本研究では、Z1とZ2ドメインの繰り返し構造が、β-1,3-グルカンへの認識にどう関わっているのかを調べるため、Z2ドメイン単独(Z2)、および二回繰り返し(2R-Z2)の組み換えタンパク質を作製し、β-1,3-グルカンへの親和性を解析した。 2R-Z2は、不溶性のβ-1,3-グルカン(カードラン)に対して、Z2よりも強い親和性を示した。しかし、可溶性のβ-1,3-グルカン(ラミナリン)に対しては、Z2は、2R-Z2および精製したファクターGと同等の親和性を示した。これは、ラミナリンに対しては、Z様ドメインは、単独でしか結合できないことを示唆している。一方では、Z様ドメインは土壌細菌(Cellvibrio mixtus)のエンドグルカナーゼ5Aのセルロース結合モジュール(CmCBM6)と相同性を示すことが判明した。CmCBM6は結晶構造が解かれており、その糖との結合部位も決定されている。今回、NMRを用いてZ2ドメインのラミナリペンタオースとの結合部位の解析を行ったところ、CmCBM6の糖結合部位であるクレフトBと対応する部位で結合していることが示された。この結果から、ファクターGによるβ-1,3-グルカン認識には、土壌細菌で糖鎖認識に使われている構造モチーフが用いられていることが明らかになった。
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