研究概要 |
我々は2種のヘビ毒から強力な血圧降下作用を示すVEGF-A相同タンパク質を見出した。2種のヘビ毒由来VEGFは4種のVEGFRのうちVEGFR-2(KDR)のみを特異的に認識し,既知のVEGFと比べて強力な生物活性を示す。以上の事実から,新型のVEGFであると結論し7番目のサブタイプとしてVEGF-Fと命名した。X線結晶構造解析の結果,VEGF-FはヒトVEGF-Aと類似した構造をしているが,レセプター結合ループの構造と表面電荷が大きく異なっていた。ごく最近,VEGF-FのC末端側ヘパリン結合領域の合成ペプチドはヒトVEGF-Aの生物活性を阻害することを明らかにし,抗VEGF薬のシードになりうることを提案した。本研究はVEGF-Fの強力な生物活性の発現メカニズムを明らかにすることで,血管新生の分子メカニズムを解明することを目的とする。1.血管新生系に作用する新規な毒素成分の探索:VEGFR-2(KDR)は,血管新生・血管形成において中心的な役割を果たす。ヘビ毒には同一の生体分子を標的とするアクチベータおよびインヒビター分子が含まれることがあることから,種々のヘビ毒にVEGFR-2に作用する新たな毒素成分を探索した。その結果,つい最近アメリカヌママムシ毒中に新たなKDR結合タンパク質(KDR-bp)を同定した。同様の作用を示すタンパク質は他のヘビ毒にも含まれている可能性を考え,さらにスクリーニングを行い数種のKDR-bpを単離・構造決定した。2.新たなVEGF様分子の探索・同定:ごく最近,他の研究グループからVEGFR-2だけでなくVEGFR-1にも結合する新しいヘビ毒VEGFが同定された。今回,新たなVEGF様分子の同定を目的とし,免疫学的および遺伝子工学的手法を用いて各種ヘビ毒を用いスクリーニングした。その結果,新規のVEGF-Fに分類されるタンパク質を単離し,その諸性質を明らかにした。
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