CERTは、小胞体からゴルジ体へとセラミドを運ぶ脂質転移タンパク質である。小胞体膜タンパク質(VAP)と相互作用すると示唆されているペプチドモチーフ(FFATモチーフと命名されている)がCERTにも存在する。そこで、CERTとVAPとの相互作用の可能性を解析した。CERTとVAPは共免疫沈降されるが、FFATモチーフ変異型CERTにおいてはVAPとの共免疫沈降が観察されないことから、CERTはそのFFATモチーフに依存してVAPと相互作用することが明らかとなった。セミインタクト細胞を用いた小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送再構成系において、CERTのセラミド輸送活性はFFATモチーフの変異によって減少したことから、当該モチーフはCERTの小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送機能に重要であることも明らかとなった。一方、CERTの人工膜間セラミド転移とゴルジ体ターゲットは、FFATモチーフ変異でも損なわれなかった。以上の結果から、CERTがそのFFATモチーフに依存してVAPと相互作用することは、CERTの小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送機能に必要であり、おそらく、CERTを効率よく小胞体に会合させる役割を担っていると示唆された。 また、哺乳動物細胞に発現させたCERTは、SDS-PAGE上で二重のバンドとして観察された。しかし、タンパク質脱リン酸化酵素で処理すると一つのバンドに収束することから、CERTはリン酸化を受けていると考えられた。また、抗リン酸化アミノ酸抗体を用いた解析から、スセリンおよびスレオニンのリン酸化を受けていることが示唆された。さらに、HeLa細胞から精製したCERTをトリプシン分解し、そこから分離したリン酸化ペプチド断片をMALDI/TOF質量解析に供したところ、CERTの特定の領域に複数のリン酸化が起こっていることが明らかとなった。
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