CERTは、ホスファチジルイノシトール4リン酸を認識するPHドメインとセラミドの膜間転移を触媒するSTARTドメインおよびを小胞体との相互作用に関わるFFATモチーフ有し、小胞体からゴルジ体へのセラミド選別輸送を仲介する。PHドメインの下流に存在する約20アミノ酸の領域(serine repeat motif ; SRMと命名)が多重リン酸化を受けるとCERT機能が負に制御される。スフィンゴミエリン分解酵素またはスフィンゴ脂質合成阻害剤によって細胞を処理するとSRMのリン酸化レベルが低下する。この低下が、リン酸化の低下によるものなのか、脱リン酸化の高進によるものなのかを検討するために、放射性無機リン酸で細胞をパルス標識し、その後のチェイス時間によるCERTのリン酸化レベルをスフィンゴミエリン分解酵素処理の有無で比較したが、両者間で差がなかった。この結果は、上記処理によるSRMのリン酸化レベルお低下は、リン酸化酵素によるリン酸化過程が負に制御されることに起因することを示唆している。また、我々は細胞内セラミド輸送に対して阻害活性を有する化合物・HPAを開発しており、HPAがCERTのアンタゴニストとして働くことを明らかにしてきた。本年度は、CERTのSTARTドメインとHPA-12関連化合物との共結晶のX線解析を行った(高エネルギー加速器研究機構の若槻教授、加藤准教授、工藤博士との共同研究)。その結果、CERTのSTARTドメインとセラミドとの共結晶解析で明らかになった様式と類似した様式でHPA化合物がSTARTドメインの両親媒性ポケットに収まっていることが明らかとなった。ただし、膜との相互作用に重要な役割をしていると考えられるSTARTドメイン中のトリプトファン残基が、セラミドとの共結晶では外側に向いているものの、HPAとの共結晶では膜と相互作用しにくい内向きに配向していた。
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