研究概要 |
生理活性脂質スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は,受容体を介して血管系・免疫系で重要な働きを示す。その免疫系での働きを利用し,S1P前駆体アナログであるFTY720が免疫抑制剤として開発されている。本年度の研究では,S1P合成酵素であるスフィンゴシンキナーゼタイプ1(SPHK1)の2つのアイソフォームが異なった制御を受けていることを明らかとした。また,これまで血漿S1Pの供給源に関して血小板の重要性を報告してきたが,本年度の研究で赤血球の重要性も新たに示した。FTY720は生体内でリン酸化されて活性型となるが,血小板がリン酸化FTY720を生成し,血漿中に放出することを明らかにした。さらに,S1P受容体S1P_1がパルミトイル化によって活性,インターナリゼーションを調節されていることも見出している。また,S1P_1が初期内胚葉分化過程で重要な働きをしており,その発現が分化の過程で変動することを明らかにした。 セラミド及びセラミド1-リン酸(C1P)もS1P同様,生理活性を示すスフィンゴ脂質代謝物である。我々は新たなセラミド合成酵素としてLASS3をクローニングし,その酵素学的性質を明らかにした。LASS3はアシルーCoAに対して基質特異性の低い点てこれまでに報告されていたセラミド合成酵素と異なっていた。C1Pに関しては,C1P合成酵素で,あるCERKを欠損したマウスから単離した細胞を用いて,マクロファージやマスト細胞の機能にC1Pが重要であることを見出している。また,PHドメインとPI(4,5)P_2によるCERKの局在制御機構を明らかにした。色素性網膜炎の原因遺伝子CERKLの翻訳産物はCERKと高い類似性を示す。我々はCERKLが核小体に局在していることを明らかにし,その局在化に必要な配列を同定した。
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