研究概要 |
我々は、細胞膜微量構成リン脂質のホスファチジルイノシトール4-リン酸のイノシトール環5位をリン酸化して多彩な機能を有するホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸を産生するホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)のそれぞれのアイソザイムに関して、それらの活性化機構と生理的役割についての解析を進めてきた。その結果、以下の知見が得られた。 1.PIP5Kγ661はAP-2複合体と相互作用して、海馬神経細胞におけるシナプス小胞のエンドサイトーシスに重要な役割を果たす 我々は、三種のPIP5Kアイソザイム、α、β、γ、と二種類のPIP5Kγスプライシングバリアント、PIP5Kγ635とPIP5Kγ661、のうち、PIP5Kγ661がAP-2複合体と特異的に相互作用することを見出した。すなわち、PIP5Kγ661に特有のC末端26アミノ酸領域にAP-2複合体のβ2サブユニットのEarドメインが結合することが明らかとなった。また、PIP5Kγ661がAP-2と相互作用すると、PIP5Kγ661の活性が顕著に増大することを見出した。さらに、PIP5Kγ661のAP-2複合体との相互作用は、マウス海馬神経細胞の神経終末におけるシナプス小脳のリサイクリングに必要であることを明らかにした。 2.PIP5KβはKIF2と相互作用して、海馬神経細胞における軸索伸長を負に制御する In vitroにおいて、PIP5Kβが特異的にKIF2と相互作用することを見出した。この相互作用により、PIP5Kβの脂質キナーゼとしての活性およびKIF2のマイクロチューブル分解活性がお互いに増大することが明らかとなった。さらに、この相互作用は、マウス海馬神経細胞の軸索伸長を負に制御することが明らかとなった。
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