研究概要 |
我々は、細胞膜微量構成リン脂質のホスファチジルイノシトール4-リン酸のイノシトール環5位をリン酸化して多彩な機能を有するホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸を産生するホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)のそれぞれのアイソザイムに関して、それらの活性化機構と生理的役割についての解析を進めてきた。その結果、以下の知見が得られた。 1.PIP5K活性化因子である低分子量G蛋白質ARF6はPIP5Kのキナーゼコアー領域(KCD)に結合する 申請者はPIP5Kの活性化因子として低分子量G蛋白質のARF6を同定したが、PIP5KのARF6との相互作用部位は不明であった。本年度は、この点を解析した結果、ARF6はPIP5Kアイソザイム間で相同性の高いKCD領域中のアミノ酸244-285領域に結合することを明らかにした。興味深いことに、ARF6の全長PIP5Kγ661への結合はPIP5KαやPIP5Kβ、およびC末端を欠失したPIP5Kγ661変異体への結合と比較して顕著に弱かった。この結果から、PIP5Kγ661は分子内あるいは分子間で相互作用してC末端領域がKCD領域をマスクしており、特異的な三次元構造をとっていることが示唆された。 2.PIP5Kアイソザイムのノックアウトマウスの作製とその解析 PIP5Kβとγのノックアウトマウスについては報告されており、前者はアレルギー反応を負に制御し、後者は神経機能に重要であることが明らかにされている。そこで、PIP5Kαのノックアウトマウスを作製したところ、本マウスは健常であり、生存に必須の分子ではないことが明らかとなった。
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