私共は、これまで蛋白質チロシンリン酸化を介する細胞内シグナル伝達系に関する研究を継続してきているが、その過程において、全く新たな細胞間シグナル伝達システムであるCD47-SHPS-1系を見出している。本研究では、このCD47-SHPS-1系の生理機能と作用機構に関し検討を行った。その成果を、以下に列記する。 (1)海馬神経細胞において、CD47はSHPS-1と協調的に作用することにより、神経突起伸長を促進して神経回路網形成に寄与することを明らかにした。また、CD47による神経突起伸長作用は、Srcおよびそれによりリン酸化され活性化されるVav2、FRGなどのGEFを介していることを明らかにした。 (2)昨年度までに赤血球上のCD47分子がマクロファージ上のSHPS-1分子と相互作用しマクロファージによる赤血球の貪食を抑制することを明らかにしていた。今年度、SHPS-1の細胞内チロシンリン酸化部位を改変、あるいは細胞内領域を完全に欠失させた変異型SHPS-1を強制発現するRAWマクロファージ様細胞を作成し、検討を行った。その結果、SHPS-1の貪食抑制作用にはSHP-1チロシンホスファターゼとの結合に重要なSHPS-1のチロシンリン酸化部位に加えて細胞内領域全体が必要であることが示唆された。また、マクロファージ上のSHPS-1は貪食標的細胞との結合をも制御する可能性が示唆された。
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