研究代表者らが発見したIκB-ζは、様々な微生物由来の自然免疫刺激物質によって、発現誘導され、interleukin(IL)-6やIL-12、転写因子C/EBP-δなどの二次応答性の炎症性遺伝子発現誘導に必須である一方、tumor necrosis factor(TNF)-αに代表される一次応答性遺伝子群の転写を抑制するという二面性をもった炎症反応制御の鍵を握る分子である。 本研究では、IκB-ζによる転写制御について検討し、ヒトβ-defensin 2及びneutrophil gelatinase lipocalin遺伝子のいずれにおいても、そのプロモーターのNF-κB結合部位とC/EBP結合部位の双方が、IκB-ζを介した転写亢進に必須であることを見出した。一方、典型的なNF-κB結合配列をもつプロモーターの転写に対して、IκB-ζは抑制的に働いた。刺激に伴い誘導されたIκB-ζは、NF-κBと複合体を形成し、NF-κB及びC/EBP結合部位をもつプロモーターへ結合し、転写の亢進に機能することが明らかになった。 また、IκB-ζの発現は、LPS等と同様にIL-1β刺激によって誘導されるが、炎症性サイトカインであるTNF-αでは誘導されない。研究代表者らは、IκB-ζの誘導機構について解析を進め、IκB-ζ誘導における転写後制御の重要性を指摘した。さらに、LPS/IL-1β刺激特異的にIκB-ζmRNAの安定化が起きること、この転写後制御には3'非翻訳領域内の165ヌクレオチドの領域が必要かつ十分であることを証明した。 さらに、B細胞でのIκB-ζの発現誘導について検討し、B細胞の抗原受容体を刺激に伴いIκB-ζが発現誘導され、その誘導は抑制性Fc受容体の共刺激によって阻害されることを見出した。従って、IκB-ζは、獲得免疫系でも機能している可能性が強く示唆された。
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